さとちゃんの、だだだだだ駄ブログ

【ナナサト】ピアノの方、勢いまかせのどーでもいい話と、たまにライブのお知らせなど大事な告知もします。

鼻水男子がテノール歌手だと気づいた話

ずっとずっと前から知っていて、何なら少し付き合った時期もあって
思い出さない日だってもちろんあるけども、名前を聞いたらそれはすぐに懐かしさと共に、
きゅっと胸をつかまれるような切なさを抱かせる。


振り返れば…

機会を用意されたから少し近づいたくらいで、自分から手を伸ばし続ける気持ちはには一切ならなかった。

もっと正面から向き合って、ぶつかり合って、
もっと触って、その良さを、その深さを、私がこの手で引き出して感じたい…

 

なんて気持ちにも、なるはずもなかった。

 

鍵盤ハーモニカの話です。

 

夏休みに入り、長女が鍵盤ハーモニカを持ち帰ってた。(以下「ピアニカ」とします)

一応私も母さんなので、さほど使ってもいなそうなホースの吹き口と、全く使ってないだろうマウスピース(短いやつ)を水道でじゃーじゃー洗ってやる。

乾いてケースに戻し、後で片付けようとリビングのそこらに置いていたら、突然「ぷふぁあぁー」と音が響いた。

それが、いい音だったのである。

 

私が知っているピアニカの音というのは、
音楽室で、自分含めた同級生が、ピアニカにホースを差し込んだ順に自分勝手に「パー」と吹き出し
それはドだったりファだったり(黒鍵鳴らす奴はあまりいない)たまに指を平たくして「ファソラシ」と連続する白鍵をべた押ししてたり、

共鳴でも共存でもない、今思い出しても「うるせえな」「美しくないわね」としか思えないあの、無秩序な音の集合。

 

もしくは

担任の「サン、ハイ!」で一斉に同じメロディを吹くも、ピッチは微妙にずれているし、もちろん間違う子もいるし、とてもユニゾンの旋律を吹いているようには聞こえない音の集合。


私の、30年ほど前の、ピアニカの思い出なんてそんなもんである。美しい音の記憶でもなければ、吹いて楽しかった記憶でもない。

それが

今、私の背後から、とてつもなくいい色で、「ぷふぁあぁー」とピアニカの音がしたのである。

 

すぐさま振り返った。
そしたら、3歳の次女がピアニカケースを自分で開けて、ホースを自分で本体に差し込み、「ぷふぁあぁー」と鳴らしていたのである。

母さん、2度びっくり。


「ちょちょちょちょ、ちょっと、貸して」と言って、ホースでなくマウスピースに付け替え、一瞬ゴクリと唾をのんで息を吹き込んでみる。

「プフゥーーワ!」

 

!!!!!!!!!!
「超、いい!!!」


どうしてだ。昔から知ってるこの楽器。少し吹いたこともあるこの楽器。
こんないい音が出るって、どうして知らなかった?
いやこれを「いい音」と思うのが、年取った証拠なのか?

どうして?どうして?

どうして私は、こんなに長い間、こいつから離れてしまっていたんだあああああああああああああああああああああああ?

 

 


ピアノ弾いてたからである。


むちゃくちゃ失礼極まりない、身の程知らずな言い方をすれば
「だってピアニカって、ピアノのおもちゃみたいなもんじゃん」と。


「72色の色鉛筆を使って自由自在に描いている人が、今更、お祭りクジの景品にありそうな、10本セットの色鉛筆では描かないだろう?」に近い。

 

88鍵ある楽器を両手で弾いてるのに、今更、32鍵しかないピアニカで、単音プーピー鳴らさないだろう?
というところである。ああ書きながら自分がいやになってきた。


ポイントとしては、「鍵盤数が少ない」「一度に出せる音が少ない(※物理的には出ますが、仮に10鍵盤を抑えたとして、それを鳴らすに必要な肺活量といったら相当なもの)
「子供がやるもの」「見た目チープ」…みたいなところで、

ああいやだわこんな言い方、つまりはピアニカなんて眼中になかったのである。

 

それが、そういった私の歪んだ固定観念を吹き飛ばすかのような
次女が出した、それはそれは味のある「ぷふぁあぁー」。

そしてそのあと、一礼するような気持ちで吹いて出してみた、自分の「プフゥーーワ!」の音の響き。そして吹いているときの気持ちよさ。


ピアニカ、、、、なんていい楽器なのよ!!

 

初恋の男子に偶然会って胸をギュッとつかまれるような切なさ、ではなく

いつも鼻水を手の甲で拭って半ズボンにこすりつけては甲高い声で人の名前を連呼するヤツも、将来テノール歌手みたいな声で歌い上げる素敵な大人になるんだわあ

という感じである。

( いや違う、あくまで私の感じ方の問題ですw)

 

でもって、

ピアニカを「ピアノのおもちゃみたいなもの」などと表したのは全くの間違いであって甚だ恥ずかしい。共通しているのは「鍵盤があること」だけで、これらは全く別の楽器でした。打鍵楽器ではない。管楽器だ!!

この場を借りて、いろいろ誰かに(主にピアニカさんに)お詫び申し上げるとともに、自分のピアニカに対する記憶を上塗りしたい。そして今こそ、向き合いたい。


というわけで、突如、鍵盤ハーモニカをちゃんとやってみようかなと思うに至った夏の日のさとちゃんでした。f:id:nanasatoakita:20201001084146j:plain

娘のピアニカはピンクなんだぜ。かわいいね。現代っ子ね。

最後にもう一つ書き直す。

72色の色鉛筆を使う人が今更10色だけの色鉛筆セットは使わないなとさっき書いたけど、これも違う。

72色を自由自在に使う人なら、審美眼と愛でもって10色だけでも素晴らしい絵を表現するんだと思う。赤系の色が「赤の色鉛筆」しかなかったとしても。

濃淡とか、空白とか、タッチの強弱とか、色の混ぜ合わせだとか。

 

私はもうすっかり、ピアニカを「鍵盤の数とか何とか、ピアノより足りないもの」というように見ていない。むしろピアノにできないあれもこれもに気づいてワクワクして、記事が2000文字を超えたので、いい加減この辺で。アデュ。