さとちゃんの、だだだだだ駄ブログ

【ナナサト】ピアノの方、勢いまかせのどーでもいい話と、たまにライブのお知らせなど大事な告知もします。

【オリジナル】種と実

2020年12月2日。ゴミを出しに家の外に出たら、空気が冷たく、でも澄んでいて気持ちのいい朝だった。この日は、10日ほど前に辞めた会社に出向いて健康保険証を返却すると共に、置きっぱなしの私の私物を引き取り、その足で心療内科に向かう予定があった。

会社に行けなくなってから約4か月。社長と会って近況報告をしたり、各種書類を受け取ったり届けたり、何だかんだぽろぽろと接点はあったのだけど、本当に今日でもう終わり。寂しさも悔しさも悲しさも無いけど、ただただすっきりしない朝に、その冷たく澄んだ空気はとても印象的だった。

ああ、いいなあ、こういう空気、いいなあ、いいなあとひたすら思った。

こういう、澄んだ空気が冷たくて気持ちいいことや、冬の水色の空がきれいだなということとか。「こういうこと私は好きだ!」というのを大事にしようと、何の気なしに思った。

それと同時に、先月リハで本荘に行ったとき、初めて春夏以外の海辺に立ったときのことも思い出していた。 

このときも、なんだかやけに気持ちいい時間だった。

さて、そんなことも思い出して、自分をしゃんとさせて家を出たはいいけども、会社に向かう車の中ではやっぱり、またすっきりしない想いが頭の中を占領するわけで。

意気揚々と転職したのに続けられなかったこと。続けたい、頑張りたいと思って、自分の心を頑張れるようにしむけたら体に無理が出てしまったこと。いろいろ思い出していた。

時間は午前10時ほどで、朝の冷たい空気は太陽によってすっかり暖められた小春日和だった。信号や踏切でスピードを落とし切ったときに左右に見える、まだ少し残っている草の緑や乾いた土の感じも実によく、心はふくっと膨らんだ。

冬の朝や、そのあとの日光の暖かいの、雪が降るまだ前のこんな色味、季節の移ろい、こんなことに私はとっても心が弾むこと、大事にしよう。誰が何と言おうと大事にしよう。お金にもキャリアにも何もならないけど。これは私にとって本当に栄養なんだ・・なんて思いながら車を走らせた。

誰も、何も言わないよ、ははは。

 

会社に着いて社長に保険証を渡し、代わりに、それなりに溜まった私物を受け取った。女性社員の誰かがまとめてくれてて、さっと受け取った。社長は笑顔で「じゃあ元気で」と言ってくれて、私も笑顔で後にしたけども、何もできなかった申し訳なさ、会社を引っ掻き回しただけの申し訳なさ、情けなさ不甲斐なさ、そりゃ出てくる出てくる。

その足で心療内科に行き、「さて、(最近)どう?」と医師に聞かれたら、次々と出る涙。看護師さんが、初診のとき以来で、箱ティッシュをそっと置いてくれた。

泣いたらやっぱりすっきりするもので、会計が終わってまた車に乗り込むころには、晴れた空と暖かい日光の力も加わって、妙に元気になっていた。

そこで、スマホTwitterを見たら、ななちゃんのこんなツイートがあった。

ななちゃんも、朝の空気感じてたんだな~~!なんて嬉しくなると同時に、私の中でもむくむく膨らむものがあって、車を走らせて次に立ち寄ったTSUTAYAの駐車場で、スマホのメモに詞をずらずらと打ち始めた。そしてすぐ送った。 

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そのときのメモが今は消えてしまってるけど、ここから「種と実」は作られ始めた。

最終的に削られた内容や、製作途中で消えていった部分もあるけども、ななちゃんツイートを見て私の中でもむくむく動き出したものが、そのまま歌詞に残った。

私だけの好きなもの だいじにしていいでしょう

私だけがわかればさ いいよね

何にもならないことや どうにもならない気持ち

食べて 食べて 食べて生きてこう

 

さてここから、勢いよく曲ができればどれほどいいか…。

ざっと歌詞はできたものの、ピンとくるメロディーが付かないまま2か月ほど置かれ、再び動き始めたのは、違う曲を作っていて煮詰まった最中でした(そしてそっちは、未だ完成していない)

Aメロに乗せた季節の内容、実は私が好きな枕草子の冒頭

春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、…

夏は夜。月のころはさらなり、…

秋は夕暮れ。夕日の差して山の端…

冬はつとめて。雪の降りたるは…

これを拝借し、冬の朝、春の夜明け、そして夏と秋でワンフレーズに収めたいので「夏 まだ夕暮れ」と表してみた。

そしていつも悩む曲名…これは、9割がた歌詞とメロディーができたところで「種と実」と思いつき、そこから「私を作る大きな実り」の2番を「美味しい実り」と変えたところで、完成。

いい曲できた。我ながら。大事にしたい。


www.youtube.com

種と実

 

水辺の冷えた風 雪に消される音

君の声の響き 澄んだ冬の朝

氷の中動く 溶け出す春の水

急ぎだした夜明け 君を想う時間

 

私だけの好きなもの だいじにしていいでしょう

私だけがわかればさ いいよね

 

何にもならないことや どうにもならない気持ち

乾いた種を手のひら包む こぼれ落ちないように

誰にも見えないものね どんどん熟れてく夢

私をつくる大きな実り 食べて食べて 食べて生きてこう

 

高く伸びてく雲 予想した土砂降り

君が見てた景色 まだ夕暮れ

 

私だけの好きなもの だいじにしていいでしょう

私だけがわかればさ いいよね

朽ちてくもの 芽吹いたもの 流れ消えてゆくもの

膨らむもの 痛いくらい満たしてゆくもの

 

何にもならないことや どうにもならない気持ち

乾いた種を手のひら包む こぼれ落ちないように

誰にも見せないものね 独りで熟れてく夢

私をつくる美味しい実り 食べて食べて 食べて生きてこう